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塞翁が馬

カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
いつもこうしん堂ブログ「お坊さんの1分説法」を
お読みいただきありがとうございます。
 
早いもので、もう今年も残すところ10日ほどとなりました。
2021年が2022年になったからといって
何が変わるわけでもないのですが
やはり気持ち的に、けじめをつけたり
区切りがあるというのはありがたいことだなと感じます。
 
今日は、私の好きなことばのお話を。
 
「(人間万事)塞翁が馬」という、ことわざです。
 
大変有名なことばですが、
次のような故事に基づいていると言われています。
 
 
中国の北端の「塞(とりで)」の近くに、
ひとりの「翁(老人)」が住んでいました。
あるとき、彼の飼っていた馬が逃げてしまいました。
悲しいことなので、みんなが同情しましたが、
彼は「これは幸運の兆しなのだ」と言いました。
すると、そのとおり、
逃げた馬は立派な馬を連れて帰ってきました。
そこでみんなが祝福すると、
今度は「これは不運の兆しなのだ」と言いました。
実際、しばらくすると彼の息子がその馬から落ち、
足の骨を折ってしまったのです。
またみんなが同情すると、
彼の答えは、「これは幸運の兆しなのだ」でした。
息子はその怪我のおかげで、
戦争に行かずにすんだのです。
 
 
このように、人生、なにが起こるかわからないものです。
 
よく言われるたとえが、
宝くじが当たって莫大な富を手にした人が
感覚が変わってしまい、数年後には手にしたお金も底をつき
路頭に迷ってしまった。
とか、小さいころ、大変貧乏で
それを乗り越えようと必死にがんばった結果
今では大企業の社長になっている。
など。
 
振り返ってみると、身近でもこのようなことは
よくあるのではないでしょうか。
 
この「塞翁が馬」を意識していると
うまくいっていても
「調子に乗っていたからこんな目に遭った」
ということがなくなったり、
 
反対に、つらいことがあったとしても
「これがかえっていい結果をもたらすかもしれない」
と思い、がんばれるものじゃないかと思います。
 
 
2021年、うまくいった人もいかなかった人も
「人間万事塞翁が馬」と心がけて
2022年をよりよい1年にしていただければと思います。
 
2021-12-21 08:00:00

紅葉

カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
いつも、こうしん堂ブログ「お坊さんの1分説法」を
お読みくださりありがとうございます。

和歌山でも少しずつ紅葉を感じる季節になりました。
秋という季節には深みがあり、
成熟したものごとに例えられることが多いようですが、
今日は『雑宝蔵経』より、こんな話を紹介させていただきます。
(一部抜粋、加筆しています)



昔、インドに「老人を捨てる」という習慣のある国がありました。
この国では、どんな老人であれ、みんな遠くへ捨てることになっていました。
しかし、この彼は大変親孝行だったので、父親を捨てることができず、
床下に穴を掘って隠し部屋をつくり、そこに住まわせて世話をしていました。

ある日のこと、この国の王のところへ神が現れ、
二匹の蛇を連れてきて、こう言いいました。
「この蛇のどちらが雄でどちらが雌かわかるだろうか。
もし1週間以内にそれがわかれば、あなたの国は安定し立派に栄えるだろう。
だがもしわからなかったら、この国はすぐに滅びることになる。」

王は恐怖に怯えて悩み、臣下を集めて協議をしました。
しかし、蛇の雌雄を判断できる者はおらず、困った王は
「蛇の雌雄を判断できたものには褒美を与える」
と、国中にお触れを出しました。

それを見た彼が、家にかくまっている父にそのことを話すと
「そんなのは簡単だ。柔らかいものの上に乗せて
暴れまわるのが雄で、じっとしているのが雌だ。」と答えました。
彼は急いで王のところに行き、そのことを告げると
王が神に話し、まさしく正解でありました。

神はそこで次の問題を王に出しました。
「ここに、大きさも形も同じ2頭の馬がいる。
どちらが親でどちらが子かわかるだろうか。」

王と臣下が相談しましたが、また答えは出ませんでした。
そこでまた国中から答えをつのることにしました。
彼がまた父にその話をすると、
「馬に草を食べさせればわかる。親は子に草を与えようとする。」
と言いました。

それもまた正解でした。
神は大いに喜び、その国の安全と繁栄を約束して帰られました。
王は歓喜し、答えをもたらした彼にこう聞きました。
「あなたのあかげでこの国は救われた。
あの答えはあなたの知恵によるものか。
それとも誰かに教わったものか。」

すると彼は、こう言いました。
「いいえ、私の知恵ではありません。
私が何を話してもお許しくださるなら、正直に申し上げます。」

王「そなたに重罪があったとしても、罰することはないだろう。」

彼「では申し上げます。
この国は法律によって老人を捨てることになっていますが
実は私には年老いた父がいます。しかし育ててくれた恩を思うと
とても捨てることなどできません。
そこで法を犯して家に地下部屋をつくり、
父をかくして世話をしてきました。
今回の答えはすべてその父に教えてもらったのです。
王さま、お願いがあります。どうか老人を大切に養えるよう
国の法律を変えてください。」

王は再び歓喜し、こう言いました。
「わかった。これまでの法律はまちがっていた。
今後は老人を捨てることを禁じる。
老人は国の宝として大切に敬い、孝養をつくさなかればならない。



お釈迦さまが「孝養父母(きょうようぶも=親孝行のこと)」
の大切さを伝えるために説いた、たとえ話だとされていますが、

日本にも「うば捨て山」ということばがあるように
昔、そのような習慣があった国は実際に一部あるようです。

しかし、先人の知恵が国や人を救うことももちろんあります。
そもそも、現在の世界があるのは、先人たちのおかげです。

紅葉を美しいと感じる私たちの心には、
先人たちや、収穫・与えられたものに感謝をするという性質も
きっと備わっているだろうと思います。
忙しい時や、大変な時であっても、忘れないようにしたいですね。
2021-11-09 08:00:00

足の裏

カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
いつも、こうしん堂ブログ「お坊さんの1分説法」を
お読みくださりありがとうございます。

お彼岸も終わり、朝晩すこし涼しくなってきました。
お彼岸にはお墓参りなどされ、ご先祖に思いをはせ
仏教にふれていただいた方も多いのではないでしょうか。

今日は、以前より時々このブログで紹介しています
仏教詩人とも呼ばれた坂村真民(さかむらしんみん)さんの詩を
紹介させていただこうと思います。



「尊いのは足の裏である」

尊いのは 
頭でなく
手でなく 足の裏である

一生人に知られず
一生きたない処と接し

黙々として

その努めを果たしてゆく

足の裏が教えるもの

しんみんよ
足の裏的な仕事をし
足の裏的な人間になれ

頭から光がでる
まだまだだめ

額から光がでる
まだまだいかん

足の裏から光がでる
そのような方こそ
本当に偉い人である



人に知られなくても、進んで大変なことをする
なかなか簡単にできることではないですが
少しでもこのような生き方ができるようになりたいものですね。
2021-09-28 08:00:00

お盆を終えて

カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
今年もお盆が終わりました。
このブログではめずらしく、所感を書かせていただこうと思います。
 
今年は全国的に天候がわるく、
雨の降り続くお盆となりました。
棚経(たなぎょう)といい、各お檀家さんを回らせていただく行事については
毎年、酷暑のなかを歩いて回るので
そういった意味では、例年より涼しくなり
ありがたい雨でありましたが、
やはり雨の中を回らせていただくのは、法衣は濡れますし
それなりに大変でした。
 
毎年、お盆が終わるとぐったりとするのですが
その中に、今年も一年やり切ったなという思いがあります。
どうやら、一年で最も忙しい時期なので
自分の中でお盆の時期が一つの区切りになっているようです。
 
お盆のおまいり(主に棚経)をさせていただいていても感じるのですが
この1年で、ペットロスを抱えていらっしゃる方に多くお会いしました。
 
コロナ禍で外出できず友人や親類たちにあまり会えないことに加え
そうでなくても独居の方が増えており
ペットが唯一の話し相手という方もおられます。
そういった方にとって、ペットは子どものような存在であり
家族の一員であるといえます。
 
そのペットが亡くなった場合の「ペットロス」については
まだまだ理解が進んでいない場合や地域も多いように感じます。
 
理解や支援が広がるのを願うとともに
私たち僧侶にとっても考えさせられる問題であると思います。
 
先にも書きましたが、どうもお盆が終わると
1年が終わったような感覚になるのですが
もうすぐ秋のお彼岸です。
引き続き、日々精進していきたいと思います。
2021-09-07 08:00:00

盂蘭盆会(うらぼんえ)

カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
いつも、こうしん堂ブログ「お坊さんの1分説法」
をお読みくださりありがとうございます。

まず、先日よりの豪雨災害に遭われました方に
心よりお見舞い申し上げます。

ひどかった梅雨も明け、夏も本格的になってきましたので
今日は「お盆」について書かせていただきます。

お盆とは、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の略で
「盂蘭盆」とは
逆さまに吊られるような苦しみという意味があります。

どうしてそんな意味のことばがついたかといいますと

お釈迦さまの弟子のひとりに目連(もくれん)という方がいました。
目連は、神通力によって、亡き母の今の様子を見てみると
餓鬼(がき)の世界で苦しんでいました。

お釈迦さまになんとか母を救う方法はないかと尋ねたところ、
僧侶たちの修行が終わる7月15日に
(旧暦で考えるので、関西などでは8月15日を中心に行われます)
僧侶たちに供養して、
その僧侶たちが色んな世界にいる人たちを供養するなら
きっと母親も助けられるだろう
と言ったのがはじまりとされています。

この故事ですが、目連は
神通第一(神通力が弟子の中で最も優れていること)や
目連尊者(もくれんそんじゃ)と言われるほどの
立派な弟子でした。
その母親がどうして餓鬼となり苦しんでいたか
というところも気になるわけです。

目連からすると、
とても優しくて何でもしてくれたあの母親がどうして
と思ったわけなのですが、

その母親は目連にとっては、世界で一番優しかったが
実は、何でも自分の子どもにやってあげたいがために
まわりの子どもと差別してでも、自分の子どもにばかり
色々与えていた(から、餓鬼の世界に堕ちた)
と、この故事には説明されているようです。

ここが考えさせられるところかなと思いました。
自分さえ、自分の身内さえ、よければいい
という考え方にならないよう、
私たちも注意したいものですね。
2021-07-20 08:00:00

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