少女サーヤのはなし
カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
おはようございます。
先週、六波羅密(ろくはらみつ)の第一、布施について、
布施とは金品を提供することだけではない、と
「無財の七施(むざいのしちせ)」を紹介しました。
今日は、少女サーヤのはなしを紹介します。
少女サーヤは幼くして両親を亡くし、
長者の屋敷に引き取られて働いていました。
ある日、孤独の寂しさに耐えきれず、一人で泣いていた時、
僧侶に出会い、サーヤはお釈迦さまの説法を聞きに行くようになりました。
ある日、夕食を終えた長者が庭を見ると、
サーヤが桶を持ち、草に向かって
「ほら、ご飯だよ、ゆっくりおあがり。」
と話しかけながら、桶の水をかけていました。
長者がサーヤに訳を聞いてみると、
「はい、お茶碗を洗った水を、草や虫たちに施(ほどこ)しておりました。」
「そうか、だが、施す、という言葉をどこで知ったのだい?」
「はい、お釈迦さまです。毎日少しでもいいことをしなさい、
と教わりました。いいことの中でも1番大切なのは布施だそうです。
貧しい人や困っている人を助けるために物やお金を施したり、
お釈迦さまの教えを多くの人に伝えるために努力することをいいます。
私は何も持っていないので、せめてご飯粒のついたお茶碗をよく洗って
そのお水を草や虫たちに施そうとおもったのです。」
感動した長者は、「お釈迦さまの説法の日には、仕事しなくても
いいから、朝から聞きに行っておいで」と言ってくれました。
それからしばらくして、長者はサーヤがとてもニコニコしている
ことに気づきました。いつも楽しそうに働いているのです。
長者が「サーヤ、なにかうれしいことでもあったのかい?」とたずねると、
「はい!私のようなお金や財産がまったくない人でも、
思いやりの心さえあれば、7つの施しができると、
お釈迦さまが教えてくださいました。
私にもできる布施があると知ってうれしくなったのです。」
サーヤは、笑顔でつづけました。
「私には、2番目の、和顔悦色施(わげんえつじきせ)
ができそうなので、一生懸命に、優しい笑顔をするようにしているのです。」
「そうか、ニコニコしていることは、そんなにいいことなのかい?」
「はい。暗く悲しそうな顔をすると、まわりの人もつらくなるし、
自分もみじめな気持ちになります。
苦しくてもにっこり笑うと、気持ちが和らいでくるし、
まわりの人も明るくなります。
いつもニコニコしようと決心したら、
親がいないことや、つらいなと思っていたことが、
だんだんつらくなくなってきました。
泣きたい時も、にっこり笑ってみると、
気持ちが落ち着いて泣かなくなるんです。」
黙って聞いていた長者は、胸が熱くなってきました。
「サーヤよ。そんなにいいお話、わしも聞きたくなった。
お釈迦さまのところへ連れていっておくれ。」
長者はそれ以来、一緒にお説法を聞き、
お釈迦さまの教えを広める「布施行」にいそしんだと言われています。
2014-09-09 09:00:00
無財の七施
カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
おはようございます。
早いものでもう9月ですね。
今日は先週に引き続き、お彼岸のはなしを書きたいとおもいます。
先週、お彼岸とは、到彼岸(とうひがん)のことだとかきました。
到彼岸とは、さとりの世界に渡ること。
その到彼岸するための方法として、六波羅密(ろくはらみつ)を紹介しました。
六波羅密とは、
布施(ふせ)、持戒(じかい)、忍辱(にんにく)、
精進(しょうじん)、禅定(ぜんじょう)、智慧(ちえ)
の6つですが、
今日はその第一、布施について書きます。
布施というと、坊主が布施の話ばっかりしやがって、
と、お金を出すことだけだと勘違いされやすいのですが、
そうではなく、ボランティアなど、
人のために時間や労力を使うことも布施です。
今日は物や金品がなくてもできる布施が
「無財の七施(むざいのしちせ)」
としてお経に説かれているので紹介します。
一つ目が「眼施(げんせ)」
優しいまなざしで人を見ること。
二つ目が「和顔悦色施(わげんえつじきせ)」
優しく喜んだ顔で人に対すること。
三つ目が「言辞施(ごんじせ)」
思いやりの言葉を施すこと。
四つ目が「身施(しんせ)」
労力の提供をすること。重い荷物を持ってあげるなど。
五つ目が「心施(しんせ)」
細かな心づかいをすること。
六つ目が「床座施(しょうざせ)」
疲れている人に寝床や座席を施すこと。席を譲るなど。
七つ目が「房舎施(ぼうしゃせ)」
宿舎や雨宿りの場を提供すること。
これらは、「してあげる」のではなく喜んですることがポイントです。
今週もまた講義のようになってしまいました。
来週は、この「無財の七施」にまつわるお話を紹介しようとおもいます。
2014-09-02 09:00:00
お彼岸・・・
カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
おはようございます。
今年の夏は雨ばかりで、もう秋がやってきそうですね。
仏教の行事でいえば、お盆が終われば次はお彼岸です。
(秋の)お彼岸は、秋分の日を中心にした1週間をいいます。
今年は、彼岸の入りが9月20日、
彼岸の中日(ちゅうにち)が9月23日(秋分の日)、
彼岸の明けは9月26日になります。
さて、少し気は早いですが、お彼岸まで、
彼岸のはなしを先取りで書いてみたいとおもいます。
彼岸(ひがん)とは、彼の岸(かのきし)という意味で、
あちらの岸、仏教でいうさとりの世界のことを指します。
それに対して、今われわれが住んでいる世界を
此岸(しがん)といいます。
此の岸(このきし)、こちらの岸という意味です。
(さとりの世界に対して、迷いの世界と言います)
仏教の目的は、さとりを得ることですから、
こちらの、迷いの岸(此岸)から、あちらの、さとりの岸(彼岸)に
渡ることをめざす教えです。
その、さとりの世界に渡ることを到彼岸(とうひがん・パーラミター)といいます。
お釈迦さまは、この到彼岸する、彼岸に至るパスポートとして、
六波羅密(ろくはらみつ)という実践方法を説いていらっしゃいます。
それは、布施(ふせ)、持戒(じかい)、忍辱(にんにく)、精進(しょうじん)、
禅定(ぜんじょう)、智慧(ちえ)の6つです。
布施とは、自分の労力や金品、真心などを他人のために役立てること。
持戒とは、決まりごとや約束を守ること。
忍辱とは、苦しさや腹立たしさを抑えて心の強さ優しさを養うこと。
精進とは、自分の責務に励み常に努力すること。
禅定とは、静かに自分を反省し、心身を安らかに落ち着かせること。
智慧とは、物事を正しく見て、真理を見極めること。
つまり正しい判断力を身につけること。
この六波羅密は、お互いの幸せのために共存、共生していく
最良の手立てとしてお釈迦さまが示されたものです。
と、すこし講座のようになりましたが、
記憶のどこかに置いていただいて、
次回もこの六波羅密について書きたいとおもいます。
2014-08-26 09:00:00
お盆の意義
カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
おはようございます。
お盆が終わりましたね。
みなさんもご先祖を迎え、送られたでしょうか。
この、ご先祖をお迎えし、お送りするというのは、
日本独自の文化です。
(厳密に言うと、中国から伝わった部分が大きいそうですが。)
先祖を敬い、供養をする。
ご先祖のおかげで、今の私があるということを感じ、感謝する、
素晴らしい文化です。
そして、お盆の由来については
何回か前に書きましたが、
目蓮尊者(もくれんそんじゃ)の母は、わが子である目蓮にだけ
優しくしてしまったので、餓鬼道(がきどう)に堕ちてしまいました。
その母を救うには、目蓮ほどの神通力を持った僧でさえ、
一人の力ではどうにもできませんでした。
お釈迦さまは、大勢の僧侶に供養をし、お経を上げてもらうよう
目蓮に伝えました。
その、大勢の僧侶のお経の功徳(くどく)によって、
母親だけでなく、餓鬼道で苦しむ皆が救われました。
この話は、私たちは一人で生きているのではない、
皆がいるから、今、私たちは生かされているのだ、
ということを教えているのだといいます。
ご先祖がいたおかげで、今、私たちは生かされている。
まわりの人々がいるから、私たちは生きていくことができる。
ご先祖に、そして、今自分のまわりにいる人々に
改めて、おかげさま、と感謝をするのが
お盆という行事である、
と私の師匠は言っていました。
日々の忙しさに追われ、そういったことを
感じる機会はなかなかないとおもいます。
みなさんそれぞれのお盆を過ごされたと思いますが、
ぜひそういった視点で、振り返ってみて頂き、
改めて、ご先祖や、今まわりにいる人々の
おかげさまを感じてみて頂ければとおもいます。
2014-08-19 09:00:00
人間の力では・・・
カテゴリ : [火]お坊さんの1分説法
おはようございます。
台風の被害はなかったでしょうか。
お盆を直撃したので、お寺の予定にも大きく響いてしまいました。
さて、先日、私のお寺のまわりで有名だった、
100歳のおじいさんが亡くなられました。
その方には本当に色々なことを教えて頂きましたが、
印象的だったのは、
数年前、東日本大震災があった時、
生きたくてもあのように亡くなってしまう人もおる。
わしみたいになんでかわからんけどずっと生かして
もうとる人間もおる。
こればっかりはなんでかわからんのや。
とおっしゃっていました。
人間の力ではどうしようもないことがあります。
だからこそ、できる範囲のことを一生懸命やろう。
そのように思わせてくれた一言でした。
では、台風でずれこんだお盆まいりに行ってきます。
自分にできることを少しずつ、がんばりましょう。
2014-08-12 07:40:00