もうずいぶん前になりますが、私は保健センターの管理栄養士をしておりまして、乳幼児健診の栄養指導や小学生くらいまでの子どもさんと保護者の方を対象に親子料理教室、育児サークルの栄養相談など担当させてもらっていました。
相談内容で圧倒的に多いのが野菜の好き嫌いのことでした。
新米栄養士の私は、子どもの食事の指導要領やマニュアルを読んだり、講習会に行ったり、一生懸命努力して解決策を考えていました。よくある、細かく切って混ぜ込んで食べさせるレシピなども勉強しました。
でも、あるとき、全く違うお話に出会いました。
「子どもは本能的に自分の身体に必要なものがわかっているから、無理に嫌いな野菜を食べさせる必要はない。」
指導しながら、こんなにたくさんの子どもたちが野菜嫌いなのは何か理由があるはず、、と漠然と疑問を持ち始めた時でしたので、すっと胸に届いて納得しました。
栄養指導では離乳食の時代から食べ物を栄養素グループに分けてバランス献立の話をします。
子どものことを考えて一生懸命頑張っているお母さん方はバランスよく野菜・緑黄食野菜を食べさせようと頑張ってくれます。
私が行っていた指導が、お母さんや子ども達を苦しめていたのかも知れない・・・と思うようになりました。
それ以降は、好き嫌い相談があっても、今好んで食べている野菜で大丈夫なこと、子どもの本能のことをお話しして、無理やりのまぜまぜだましメニューをやめました。
お母さん達にも自分の努力が足りないから・・・と思わせないように気をつけるようにしました。
子どもの小さな胃袋は主食が最優先で、ぐんぐん成長するために効率よくエネルギーをとろうとします。
ごはんやいもなどの主食が大好きな理由です。
大人達が、ビタミンが豊富だから食べてほしいと思っているピーマンなどの緑黄色野菜の優先順位は主食よりも下となってしまいます。
そして(例外もありますが)緑の野菜は熟していないもの(例えば緑のいちごやトマトを食べたいと思わないように)が多かったために祖先の経験から人間の本能で「緑のモノを食べるとお腹を痛くする、ろくなことがない」と刷り込まれてきたのではないかと言われています。
これらのお話しは、ご存知のかたも多いと思いますが、幕内秀夫先生の著書「なぜ、こどもはピーマンがきらいなのか?」に詳しく書かれています。
(もちろん野菜が大好きな子どもさんもおられますし、それはそれでその子の好み、よいそうです。)
栄養バランス・栄養素最優先主義の考え方のために、頑張っているのに、頑張りすぎているのに子どもの食事のことで責任を感じてしまっているお母さんにおススメしたい本のひとつです。
字も少なくさっと読めますし、なんだか肩の力が抜けます。それでいておさえないといけないポイントはしっかりと示されています。
まだまだ面白いお話が書かれていますので、また違う機会にこちらのブログで紹介したいと思います。
余談ですが、昔、母に聞きました。
私 「赤ちゃん・小さかったころ、どんな料理つくってくれたん?」
母 「・・・忘れたけど、とにかくおかゆ・ごはん、いっぱいたべてたわ~」
当時は手抜きされた!と思ってちょっと気分を害しましたが、どうやら間違っていなかったようです。